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まずNHKで番組編集を担当されている2人から、最近関わった番組について

おしえて下さい。

永田 最近は深夜枠の「ドキュメント20min.」をよく担当しています。

            NHKの全国の若手ディレクターが新しいテレビの形を模索する番組です。

永田敬愛

「ここが面白いんだよ!って
   後押しするのは編集マンしかできない」

​入社6年目

番組編集

​「ドキュメント20 min,」
「天才てれびくん」他

       「若手ディレクターが何をしたいか」を大切にしている番組なので、僕はまずディレクターと

   〇本当にやりたいことは何なのか

   〇今回の撮ってきた映像で何が伝えたいのか

   を丁寧に聞くことに努めています。

   最終的にできたものが、コンセプト通り、ディレクターがやりたいこと、言っていたことを表現で             きているかに気をつけています。

永田

村井  私が最近担当したのは「バリバラ」という番組で、心や身体に障害のある方たちが一堂に会して

    話すバリアフリー・バラエティーです。

​村井 真紀

「任せてもらせる部分がこんなに
​   大きいとは想像していませんでした」

入社26年目

​番組編集

「バリバラ」
「ドキュメント72時間」他

村井

 

29分の番組で、スタジオパートが18分くらいなんですけど、スタジオ収録が2時間くらいあって、話している空気感を損なわないようにギュッと短縮するのがいつも難しいです。

とにかく話している内容を切り刻まないように気をつけています。たくさん切り貼りして分かりやすいように作文してしまうと、味がなくなっちゃたりするので。

編集次第でYESの意見をNOにすることも出来ちゃうので、結構怖いですね。

​永田

ある程度編集が進むと、映像素材を全く見ていないチーフプロデューサー(以下「CP」)にVTRを見てもらって伝えたいことが伝わっているかを確認する「試写」というものがあります。

ディレクターがプレゼンしますが、それだけでは伝わらないこともあるので、一緒に説明する事もありますね。

僕とディレクターの間では「これは大事だね」「これは面白いね」とか、大切なものを共有しています。それをCPから「これ要らないよね」って言われることもあるので、そこを守るために構成を話し合います。編集に入るまでにディレクターと2~3日話し合っているので、試写でちゃんと説得できなきゃいけないなって反省することもあります。

村井

そこまで考えたことがなかったので反省します。(笑) 

私はCPの話を聞いているうちになびきがちで、試写で納得いかないまま終わるってことはそんなにないかも。でも、次の試写に向けて編集しながら「やっぱり机上の空論で破綻しているな」と気づくこともあります。

それ!結構ありますね。論理的に思えたけど、編集していると何かおかしいなとか。

 

「味がなくなっているな」とか「ここは大切にしよう」と思っていたところがいつの間にかなくなっているとか、よくあります。結局、試写を重ねていくうちに取り戻して「最初からこうしてたよね?」ってことになったり。

二転三転できる時間があるのはすごい強みかなと思います。僕は以前、報道に携わっていた時、毎日時間に追われていたので(笑)    番組の良い部分だと思います。

村井

永田

​永田

フジテレビでニュースを担当している浅野さんと吉田さんはどんな感じで仕事しているのですか?

 

「テレビニュースがなくならない限り、
          ニュース編集マンは必要」

浅野 暁子

入社27年目

ニュース編集

「Live News Days」
「Live News イット!」他


 

浅野 私はお昼の「days」と夕方の「イット!」を担当しています。

一番に心がけているのは 伝わりやすさ。あとは間違ったものや使っちゃいけない映像に注意をしながら確実にOAへつなげることです。

「イット!」では1分くらいの短いフラッシュニュースを1時間に3本ぐらい編集することが多く、素材映像を見てニュース原稿を見て、即座にこの画が必要だなって判断しています。自分では「こういう風につなぐと分かりやすいかな」とプランがあっても、ニュース原稿と合わせてみると分かりづらいこともあるので、その時はつなぎ方を変えます。

浅野

僕はシフト勤務なので報道のどの番組にも関わっています。

吉田

​吉田 直矢

入社3年目

ニュース編集

「Newsイット!」
「Live News α」他

「OAに出すことが一番大事なので」

最近はどんなニュースを担当しましたか?

安倍元首相の国葬を担当して8分のVTRを編集しました。

取材カメラがとにかく多くて、一人じゃ見きれないぐらいの素材が入ってきたんですよ。

OAに間に合わせるために編集マンが四人になって、会場の内と外の映像を分担して見て、

ディレクターや記者の原稿を基に編集しました。原稿が上がるのが遅かったり、内容が大きく変わったりもしますが、臨機応変に対応します。

自分はかなり怖がりで、OAに確実に出すために保険のカットを入れて編集します。例えば「こう展開するからこういった画が来るよね」って予想しつつ、OAに支障のないリハーサルの広い画を事前に入れといて、いい画が来たら差し替えます。OAに出すことが一番大事なので。

僕もニュースに携わった時に、こんなスリリングな現場だとは全く思ってなくて(笑)

自分が担当した項目なんかOAが始まっても、まだ編集していることもあったりしますし。

スーパー(字幕テロップ)も生で充てるから、OA1分前まで編集できるよね。

手が震える時があるもんね(笑)

毎日のように震えながらやっていましたね。ギリギリに追い込まれると皆で確認しあうことも

難しいので、編集マンが「これはまずいんじゃないか」って言って止めることもありますし、

プレッシャーは想像以上だなって思います。

番組の編集に関しては、こんなに発言権があるんだなって今も驚いています。ウエイトと言うか、任せてもらえる部分がこんなに大きいっていうのは想像もしていませんでした。ナレーションをディレクターと一緒に考えることもあるし、一度だけですが自分が言ったタイトルがそのまま採用されちゃったこともあります。

 

たしかに。番組とニュースのギャップをすごく感じましたね。

 

 

吉田

永田

​浅野

永田

村井

永田

今まで一番印象的だったニュースは何ですか?

僕は西日本豪雨です。夜から朝にかけて大雨が降って、どんどん変わっていく街並みをリアルタイムで見ていました。数日後、奥さんと娘さんが行方不明の父親の取材で、ショベルカーを使って捜索していたんですけど、唯一見つかったのは娘さんが大事にしていたぬいぐるみというのがすごく印象深かったです。

どうしても災害報道って人数が重要視されると思うんですよね。東日本大震災でも1万5,000人以上が亡くなったことがセンセショーナルになっていたんですけど、その中にもひとりひとりのストーリーがあって忘れちゃいけないし、ひとりひとりの命があるんだなってすごく感じて、数じゃない報道っていうのも大事だなって思いました。

自分はロシアのウクライナ侵攻です。クリミア侵攻当時は高2で新聞やテレビの見出しくらいしか知らなかったんですよ。ロシアってフィギュアスケートも強いし、W杯も開催していて、それがまた侵攻するんだって衝撃を受けました。

編集中に病院の地下に赤ちゃんや子どもの遺体が並んでいる映像が目に入って辛いなと思ったんです。その日、帰宅の電車内で目の前に5歳くらいの女の子が座っているのを見て、すごいギャップを受けちゃって、映画とか見ても泣かない自分が、現実を目の当たりにしたというか、ほんとに胸に来ちゃって危うくその子の前で泣きそうになりました。

テレビで放送できない映像の中にたくさん現実があるよね。

早く終わってほしいですね。

 

 

 

 

 

 

 

浅野

東日本大震災です。勤務中に揺れて帰れなくて翌日まで仕事を続けました。すごいなと思ったのが、みんな何とかして出社しようとするんですよね。大変なことが起こっている、ニュースの現場は大変だから、

なんとか手を尽くしてくるんです。実家が被災地だとか、家族がどんな状況なのか不安の中でも放送に向き合うっていうところが、ニュースの編集マンとしてすごかったなって思います。

それから被災地の映像が来た時の衝撃。夜に沿岸の映像が来て、

真っ暗闇の中で何かが一面燃えていて「どうゆう状況?」「なにこれ?」ってぞわぞわして、夜が明けて衝撃で泣きました。

そうやって感情が出ちゃう中でも、プロとして仕事に向き合ってOAにつなげるっていう体験をしました。すごくつらかったけど仲間と一緒にがんばれっていうのはありました。

それから一番忘れられない嫌だったことがあって、避難所で被災者に今必要なものを聞いたんですけど。編集の際にディレクターから「時間の関係でこの人無し」とか「男性が続いちゃうから女性」とかって言われて。被災者は時間を割いて訴えているのに、どうして全部使ってあげないんだろう、ひどすぎるって言いました。まぁテレビだから仕方ないんだけど…

永田

吉田

浅野

吉田

この仕事に就こうと思ったきっかけを教えてください。

僕は大学院に進んでたんですけど、自分勉強に向かないなって気づいてやめて、

1・2年定職に就かずぶらぶらして(笑) 毎日映画とかテレビばっかり見てて、

知人と会った時に「そんなにそういうのが好きだったら編集って仕事どう︖」って

勧められました。たまたまその知人がペディックの人と知り合いだったので、繋いでもらって

受けて。映像の知識は全くなかったんですけど、一から手取り足取り教えてもらいました。

永田

 

 

 

 

 

 

 

大学祭の実行委員会で広報部にいて、パンフレットを作るときにみんなで印刷所に泊まり込んだんです。みんなでひとつのものを作るっていいな、そういう仕事はないかなと思って制作会社を希望しました。ペディックを紹介されて連絡したら、社長が「話聞かせて」と快くアポ取ってくれました。

 

 

大学で映画の演出やディレクターの勉強をしていて、就活はことごとく全部落ちて(笑)就職指導課に行ったら、ペディックとドラマの制作会社、広告代理店を紹介されたんです。制作会社には先輩がいて話を聞いたら、「ブラックだからやめときなさい」って言われて、じゃあとりあえずペディックに行ってみようと勢いで来たんです。

映像系の仕事に携わっていきたいと思っていたんですけど、ペディックと出会って映像編集って分野もあるんだって知りました。

 

 

田んぼしかない中で育ったんですけど、高校の時に「映画監督になりたい」という同級生がいたんです。東京に出たらそういう道もあるんだ、そういうことも目指していいんだなと思って、

映像の専門学校に行きました。スタジオやドラマの演出とか、ひとりでカメラ持って外に出たり、いろいろやった中で編集が一番楽しくて自分に向いているかなと思ったのがきっかけです。

就活は何となく番組を作っているイメージでポスプロの見学に行ったりしたんですけど、その時ニュース編集って初めて知りました。ペディックに見学に行ったら仕事場がテレビ局だし、なんか面白そうだな(笑)と活気がある感じだったので、自分はこっちが向いているかもしれないと思いましたね。

村井

吉田

浅野

浅野さんはお子さんがいますが、仕事と育児の両立は出来ていますか?

ママの人数も増えてきて、ありがたいことに周りの理解もあって、働きやすい環境にしてもらっているなって思います。以前は夫の家族になんとかお願いして出てこなきゃいけないって、ちょっと無理していたこともあったんですけど、今は「こういう時、大変だよね」ってお互い配慮がありますよね。夕方のニュースもママたちは上手く担当させてもらっています。

パパたちはママほどの対応が出来ていないのが現状です。パパたちも環境が許せばそういった対応があればいいなって思います。

​浅野

ディレクターが編集することもできるし、未来にはAIでも編集ができるかもしれない。

それでも編集マンが必要な意味は何でしょうか?

ニュースは圧倒的に速さが違うと思います。ディレクターでも記者でも自分でやる余裕はないと思いますし、映像に関する知識は編集マンの方が強いです。

番組ではディレクターがやりたいことは明確なんですけど、本当に撮れているかどうかはディレクターも判断できないところがあると思うんですよね。

編集マンは取材現場の空気とかは分かりませんが、その分映像そのものの面白さや大事な部分がわかる存在なのかなと思っています。

ディレクターの不安な部分に「面白いですよ」って後押しできるのは編集マンしかできないのかなって思います。

永田

浅野

最近はAI編集の技術研究も進んでいて、単純な編集ならできるらしいんですよ。

でも、論理的じゃないものが面白かったり、大事だったりする場面って確かにあるなって最近すごく思っています。実際、省いた部分がすごく大事な役割を持っていて、それが全体を面白くしました。それをAIはできないんじゃないでしょうか。

人間の感性や感情は進化していくわけじゃないので、そうしたものを大事だよねと言えれば、編集マンって仕事はあり続けるのかなと思います。

“ガチ感”や“発見感”が求められる時は、フォーカスが合う前のところからワザと使うとか、ブレてるところを使うとか、そういうことが必要な編集ってよくあって、AIにはできないんだろうなって思います。カメラマンには嫌がられますけど。

ずっとニュース番組を担当していて、編集マンはその経験をすごく求められている感じがします。正確で伝わりやすい映像をつなげる判断力と経験値が信頼されていて、記者やディレクターから「お任せします」と言われることは多いです。

ニュースでもディレクターが編集してきたVTRにナレーションを入れたりはありますが、編集マンとしては「こっちの方がいいんじゃないか」って伝えることもあります。そういった意見を求められることは、この先もあると思います。

速さや正確さ、経験値、判断力が求められているので、ニュースが無くならない限り、ニュース編集マンは必要だと思います。

村井

最後に、テレビや映像編集に興味がある学生に向けてメッセージをお願いします。

 

 

 

 

 

日々思うんですけど、普通なら出会えない人とか、行くことができない世界を映像で見ることができる仕事だと思うんですよね。新しい世界を知ることとか、人の話を聞くことが好きな人はすごく向いているやりがいのある仕事だと思います。

好きであれば、不安なことや分からないことがあっても続けられると思います。テレビが好きで編集が好きってことが一番の条件だと思うので、気持ちさえあればやっていけると思います。

経験がなくてもテレビが好きだとか、世の中に強い興味や関心があるとすごく楽しいと思いますね。それがないとつまらなくなっちゃいます。

 

正直ペディックに入るまで、ニュースはスポーツやネットニュースぐらいしか見ていなかったので、もうちょっと色んなことを知っておけば良かったなと後悔しました。嫌にならない程度に社会のことを知っておくといいかもしれませんね。

永田

​村井

浅野

吉田

2022年10月 対談

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